2023年末から始まった、SBI日本高配当株式(分配)ファンド(年4回決算型)
配当もキャピタルゲインも狙うという、とても魅力的な投資信託です。
今回はこのファンドを、2024年9月30日付の月次レポートをもとにレビューしてみます。
なおこの記事は定期的に更新しています。
- 景気敏感株の割合が減り、守りの構成銘柄に傾斜している印象
- 構成銘柄数は79銘柄(前回50)に増え、徐々にリスク分散を効かせてきた
- 今夏から続く不安定な市場を反映してか、期間収益率は悪化
- 以前として92%が株式でハイリスクよりのファンドなので、買うなら少額積立が無難かも
直近の成績
期間収益率
過去1ヵ月:▲1.82(6月は0.30%)
過去3ヵ月:▲5.16(同0.20%)
過去6ヵ月:▲4.97(同17.83%)
設定来:14.08%(同20.29%)
設定来(≒10ヵ月)リターンはプラスとはいえ、3ヵ月前より6ポイントも下がっています。
過去1~6ヵ月のリターンはすべて6月よりも大幅に下がり、この夏の市場全体の暴落の影響が尾を引いているようです。
11月の日本では金利の上げ下げの情報が混乱し、総理大臣の意向も安定しません。
アメリカでは大統領選を控えており、景気先行きが不透明すぎる時期です。
ドル円の為替も要人発言のたびに上下してしまい、国内も世界も不安定な状況といえますね。
分配金
10月10日の決算日で、1万口あたり140円の配当が出ています。
これで3期連続で140円の配当が出たことになります。
…しかし10月の配当は特別配当金といって、要するに元本の払い戻しです。
つまり投資家の利益にならない配当金で、そのため課税もされません。
→ 分配金は2種類あるの? – 野村アセットマネジメント
これでは配当金を喜べませんね。
個人的には、直近のパフォーマンスが低下していることから、次回の配当も良くて140円だと思われます。
ポートフォリオの状況
・株式組入比率 92.21%(6月は94.76%)
・配当利回り 4.23%(同3.53%)
・PBR 1.51倍
・ROE 12.29(同11.99%)
ファンドの運用状況(抜粋・要約)
- フジクラ、長谷工、積水ハウス、SANKYOなどがプラス寄与。
- ソフトバンク、いすゞ自動車、野村不動産HDなどがマイナス寄与。
- 9月は高配当利回り銘柄のウェイトを80%台で維持した。金利上昇の恩恵を受けやすい銀行・保険のウェイトも維持。
- 高配当利回り銘柄を中心としつつ、それらの価格上昇が思わしくないときでも市場パフォーマンスに追随できるようなポートフォリオ構成を目指した。
- 9月は新たな銘柄の追加は行わなかった。
9月は銘柄を追加しなかったようですが、最新の銘柄数79と6月の50銘柄から増えています。
今後の運用方針(抜粋・要約)
・米国の利下げは既定路線となりつつあるが、景気の見通しは不透明感が高まっている。
・日本は追加利上げ懸念が後退し、景気見通しは改善している(筆者注釈:最近はそうでもなさそう)
・日本では日銀の金融政策動向が注目され、当面は神経質な動きが予想される。
・引き続き、収益性に優れ配当力のある企業への投資がパフォーマンス向上につながると考えている。
・短期的には金融など特定セクターの銘柄を組み合わせることも考慮している。
・高配当利回り銘柄比率は高め、それ以外のウェイトは抑えめにしている。
・引き続き市場動向をモニターしつつ、適宜銘柄入替や投資比率の調整をしていく方針。
ベースの方針は変わりませんが、しばらく不安定な市場となることを予想しています。
文章の中でも注視・注目・目配り・モニタリングといった、俯瞰する意味の用語が多く見受けられました。
現在はアグレッシブな運用を抑えて様子を見るフェーズということでしょうか。
構成銘柄・セクタ比率
銘柄数は79社、そのうち開示されているのは上位30社。
分散投資の有効性が出てくる70銘柄を越えたので、時間を追うごとにリスク分散を図っているようです。(→分散投資とは?)
各銘柄の保有比率は1~3%弱となり、分散を利かせているようです。
1つの銘柄を極端に多く保有することはないようです。
セクタ比率の上位はあまり変化がなく、鉄鋼・輸送用機器・建設の割合は高いままです。
ディフェンシブ銘柄である医薬品や食料品などの比率は上がりました。
今夏から続く不安定な市場動向を懸念して、前回よりもやや守りの構成銘柄となっている気がします。
(→ディフェンシブ銘柄とは?)
最新の保有銘柄全体では、景気敏感株の割合が少なくなりました。
6月のレポートで書いたとおり、相場が下落し始めたのでディフェンシブ銘柄が増えた印象です。
※▼リストはタップすると拡大します。
ファンドの基本情報
ファンド特色
高水準のインカムゲインと中長期的なキャピタルゲインによるトータルリターンを追求する。
基本的には、ポートフォリオの平均配当利回りが市場平均を上回るように銘柄選定・投資比率決定を行う。
…配当も値上がり益も狙うとはなんて欲張りな投資方針なんでしょう笑
でも、こういったわかりやすく欲丸出しのファンドは今まで目立たなかったので、その潔さが人気の秘訣かもしれません。
ファンド設定後わずか48営業日で、純資産総額が500億円を突破したことからも、いかに人気であるかが伺えますね。
設定日
2023年12月12日
構成銘柄
詳細は上述したとおりです。
資産クラス構成
国内株式 92.21%(6月は94.8%)
国内リート 1.93%(同1.7%)
現金など 5.9%(同3.6%)
手数料
買うとき(購入時手数料):なし
保有時(信託報酬):0.099%
売るとき(信託財産留保額):なし
…コストは激安の信託報酬のみです。
分配方針
決算月は年4回(1・4・7・10月)。
分配金額はファンドがいい感じに決定し、原資が少額の場合は分配しないこともあるようです。
分配対象額の範囲は、繰越分を含めた経費控除後の配当等収益と売買益(評価益を含みます。)等の全額とし、委託会社が基準価額水準、市場動向等を勘案して収益分配金額を決定します。ただし、分配対象額が少額の場合等は、分配を行わない場合があります。また、将来の分配金の支払い及びその金額について保証するものではありません。
交付目論見書より
販売会社
SBI証券、SBI新生銀行の2つだけです。
このファンドを買うにはどちらかを利用する必要があります。
NISA適用
成長投資枠のみで購入できます。
つみたて投資枠では、条件を満たしていないので購入できません。
少額積立可能
100円以上1円単位で買付できます。
最低100円からで、101円でも買えるということです。
売却時も100円以上1円単位で発注できます。
SNSの声
ポジティブな意見
・毎日1000円ずつ買ってるけど今のところプラス
ネガティブな意見
・半導体ブームに乗った銘柄構成にしたことで信用できなくなった
・当初から持ってた株を全部売った。アクティブ運用は方針転換があるからよくない
・衆院選前に下げすぎ。全然安定しない
・ポジション解消したわ
・VYMに引っ越すことにした
当初のエゴサよりもだいぶ、ネガティブな意見が増えてきました。
一括でも積立でも、この銘柄を保有している方は値動きや配当が気になるのかちょくちょく価格をチェックしているようです。
そして、直近のパフォーマンスの悪さと10月の配当が特別配当金だったことに失望する声が目立ちました。
その結果、保有していた分をすべて売って他に引っ越す動きが散見されます。
特に、アクティブファンドであることを毛嫌いする意見が多かった印象です。
アクティブ運用では構成銘柄や投資方針がコロコロ変わるので、短期で儲けてサッサと離脱する投資が低リスクといえます。
もちろん長期間の後にインデックスファンドを上回る超ハイパフォーマンスとなる可能性もあります。
しかしそこに至るまでの低パフォーマンス時代の投資資金拘束を避けたい場合は、SNSで見られたようにプラスが出ているうちにさっさと売り逃げるのも有効な戦略といえます。
全体的な印象として、「インカムもキャピタルもどちらの利益も狙うのは無理があるのかな」と思われ始めた印象でした。
まとめ
今回はSBIの欲張りファンドについて、私見とともに紹介しました。
- 景気敏感株の割合が減り、守りの構成銘柄に傾斜している印象
- 構成銘柄数は79銘柄(前回50)に増え、徐々にリスク分散を効かせてきた
- 今夏から続く不安定な市場を反映してか、期間収益率は悪化
- 以前として92%が株式でハイリスクよりのファンドなので、買うなら少額積立が無難かも
SNSでは未だにファンド開始直後に一括投資した方の好成績が目立ちます。
しかし今夏に投資した場合はマイナスのパフォーマンスになっているかもしれません。
構成する資産クラスもほとんどが株式なので、全体としてはハイリスクな商品に分類されるでしょう。
NISAの成長投資枠でしか購入できないことからも推測できます。
魅力的な商品ですが、買い方次第でいくらでもリスク低減を図れるので、ここまで読んでいただいた皆さんが損しないような投資行動を取れることを、心から祈ります。
参考資料
SBI-SBI日本高配当株式(分配)ファンド(年4回決算型)
月間レポート(9月30日基準)
※文中に出てくる具体的な投資商品などは、内容をわかりやすく解説するためだけに用いており、これらの商品への投資を勧めるものではありません。実際に投資するかの判断は自己責任にてお願いします。