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東証の取引時間延長とは?ラスト5分の戦略が変わる

この記事は約5分で読めます。

「15時を過ぎても板が動いてる…?」

そう、2024年11月5日から、東証の立会内取引が15:30まで延長されているのです。

この記事では、
・取引時間延長の背景
・延長後の特徴

についてサクッと解説。

普段から株取引をしている方も、ニュースとして知っておきたいという方も、この記事さえ読めばバッチリです。

とりあえず結論
  • 立会時間が30分延びて15:30になる
  • 15:25~15:30はクロージング・オークションのため注文のみ
  • 延長の目的は「投資家の保護」
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東証の取引時間が15:30までとなる

今まで東京証券取引所のザラ場は9:00~15:00でした。

それが30分延びて、15:30に立会終了となります。

これにより、株式などの金融商品を15:30まで売買することができます。

単純に30分延びただけではなく、今までにはなかった変更点も導入されました。

まずは延長の経緯からみていきましょう。

延長の理由は投資家を護るため

きっかけは4年前の大規模障害

延長のきっかけは、2020年10月に発生した大規模なシステム障害です。

→ 10 月 1 日に株式売買システムで発生した障害について – 東証

この日は朝から終日売買ができなくなりました。
混乱を避けるため、東証以外の証券取引所(札幌、名古屋、福岡)も取引を停止しました。

ではなぜその解決策が取引時間延長なのかというと、投資家を保護するためです。
システム障害が起きても取引時間内に復旧できれば、その日の注文を受け付けることができます。
月またぎ・決算またぎ・権利落ちなどの、一日単位で利害が決まるような発注にも対応できますよね。
私たち個人投資家としては、戦略的に考えた発注タイミングを、突発的なシステム障害に邪魔されづらくなります。

例えば、「本当は決算発表の前に保有株を売っておきたかった」と考えていたとして、発注日当日にシステム障害が起こるとその日のうちに売却発注できないかもしれません。
これが、ザラ場のうちに復旧した場合は無事に発注できますよね。

レジリエンスって?

東証の公式プレスでは延長理由のひとつを、「レジリエンス強化のため」としています。

レジリエンスとは耐久力という意味で、ストレス環境下を切り抜ける力といった意味合いの心理学用語です。

→ レジリエンス(心理学)-Wikipedia

取引所のレジリエンスが弱いと、システム障害というストレスがかかったときに終日クローズするという選択肢しかとれず、いわばストレスに負けてしまいます。

レジリエンスが強いと、システム障害に対してより柔軟な対応ができ、障害に強いシステムを作ったり早期復旧をすることで、ストレスに打ち勝つ(切り抜ける)ことができます。

取引時間が延びれば、ザラ場中に復旧できる可能性が高まる、という狙いですね。

→ 取引時間の延伸の正式決定について – 東証

大きな変更点はラスト5分の注文

ラスト5分は注文のみ受付

15:25~15:30は、注文のみが受け付けされ、売買は成立しません。
そして大引けで一気に約定します。
この仕組みをクロージング・オークションといいます。

→ クロージング・オークションとはなんですか。 – 松井証券

今までは大引けで株価が急変動することが頻発し、予期せぬ価格で約定するケースがありました。
クロージング・オークションを導入することで、ラスト5分の板情報(発注状況)を見ながら自分の最終的な発注を決めることができ、大引けでの価格急変動に巻き込まれづらくなります。

例えば、今までは立会終了の数秒前まで板とにらめっこして発注していた方も、ある程度の余裕をもって発注を決断できるようになるでしょう。

参加できる投資家が増える

単純に立会時間が伸びることで、取引に参加できる人が増えるでしょう。

特に本業のせいで頻繁にスマホをいじることができない方にとっては、取引機会が増えたと感じますよね。

例えば、仕事の都合でどうしても15時付近はスマホを触れないという方も、15時ちょい過ぎなら板を見ながら注文できますよね。

さらに重要なのが、企業の決算発表を見てから日をまたがずに注文できる可能性が出てきた、ということです。

決算発表のタイミングがバラける

東証からは発表を早める要請が

取引時間延長に伴って、東証は企業に「決算発表のタイミングをもっと早めてくれ」と要請しています。
今までは、「ザラ場中に決算発表すると市場が混乱して株価が不安定になりそう」という懸念から、取引時間中の発表を避ける企業がほとんどでした。
つまり大引け後ジャストくらいに決算発表する企業が多かったのです。

決算発表のタイミングに関する決まりはないので、発表タイミングは企業が自由に決められます。
これを東証は、「大引けが15:30になるからといって、決算発表も15:30にズラすのはやめてくれ」と言っているのです。
理由は、情報公開は速やかに行うべきものだから、ということですが、この要請に従う企業は極めて少ないようです。

しかし実際に早めるのは5%程度…

東証が800社を対象として行った調査では、要請に従って決算発表タイミングを…
・早めるのはわずか5%
・タイミング不変が40%
・取引時間延長に合わせて15:30に遅らせる企業が30%程度

だったということです。

確かに今までザラ場を避けていた経緯を考えれば、遅らせるのが妥当な気もしますよね…。
なんといっても、ザラ場で発注できる人とクローズ後でないと発注できない人を公平に扱うなら、決算ニュースが飛び込んでくるタイミングは同じ条件にした方が良さそうな気もします。

まとめ:延長の影響は未知数

今回は、東証の取引時間延長について概説しました。

ふたたび結論
  • 立会時間が30分延びて15:30になる
  • 15:25~15:30はクロージング・オークションのため注文のみ
  • 延長の目的は「投資家の保護」

延長制度はまだ始まったばかりなので、市場にとってプラスかマイナスかは未知数です。

今後のシステム障害時や決算発表のタイミングによる影響を注視しながら、なによりも私たち投資家自身にとって有利な戦略を見極めたいですね。

参考文献
現物市場の機能強化に向けたアクション・プログラム(PDF) – 東証
現物市場の機能強化に向けた取組み(取引時間の延伸等) – 東証