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企業型DCを解約できる唯一のチャンス!?転職時の行動5択

この記事は約7分で読めます。

「企業型DCは不便だから止めたいけど、規約のせいで解約や拠出停止ができない…」

そんな企業型DCから抜けられる唯一のチャンスが、離転職です。

この記事では、企業型DCに加入している方が中途退職する際の年金ポータビリティ制度について、サクッと解説します。

とりあえず結論

【転職時の企業型DCの行き先候補】

  1. iDeCoへ移換
  2. 通算企業年金へ移換
  3. 放置する(非推奨)
  4. 脱退して一時金を手にする(条件次第)
  5. 転職先でも企業型DCに入る(参考)
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なぜ企業型DCから抜けたいのか…

毎月の拠出がもったいないから、低コストの運用商品に変えたいから等、企業型DCを解約したい理由は人それぞれですよね。
企業型DCは掛金を会社が出してくれる一方で、企業側の規約による縛りが厳しいというデメリットもあります。
例えば、掛金額の変更が自由にできない、簡単に脱退できない、運用商品の選択肢が狭い…など、気軽に加入しづらい部分もあります。

そこで、同じDCならより自由度の高いiDeCoの方がいい、と考えるかもしれません。
残念ながら、企業型の資産をすべてiDeCoに移換するという制度はありません。
しかし唯一、企業型DCを脱退できるタイミングがあります。

離転職です。

転職時のDC手続き 5択

企業型DCの加入者が離転職するとき、5パターンの行動をとることができます。
留意点は、いずれも脱退というより別制度の年金への変更であること、資産の引き出しはできないということです。
DCは年金なので、強制加入の公的年金と同じく脱退することはできません。
あくまで企業型DCを抜けるチャンスだということです。

iDeCoに移換する

企業型を脱退できる選択肢です。
前職の企業型DC資産を完全にiDeCoに移換し、iDeCoの加入者もしくは運用指図者になることができます。
現行では、企業型からiDeCoにフルで移換するには離転職を伴うしかありません。
現職場のままでiDeCoにフル移換することはできない、ということです。
これは、別企業に転職する方、公務員になる方、自営業になる方、無職になる方など、離職後のあらゆるパターンが対象となります。

転職先に企業型DCがあってもなくてもiDeCoへの移換ができますが、その企業型DCが年単位拠出となっている場合は、iDeCoに加入できません。
iDeCo自体のルールがそうなっているからです。

また、転職先にDBしかない場合は、前職の企業型DCをiDeCo、もしくは転職先のDBに移換する選択肢があります。
DBに移換できるかどうかは企業のルールによりますので、転職先の担当者に確認しましょう。

通算企業年金に移換

企業型を脱退できる選択肢です。
通算企業年金とは、それまで積み立てた企業型DC資産を、一括して企業年金連合会に預けることで、決まった利率がついて将来の年金として受けることができる制度です。

通算企業年金とは
  • 最短60歳から、一生涯受け取れる年金制度
  • 80歳までの保証期間中に亡くなった場合は、死亡一時金が給付される
  • 企業型DCから企業年金連合会に移換した際の年齢で利率が決まる
  • 移換後の追加拠出はできない

という、年金の一括先払いのような制度です。

ざっくりいうと、若い方で、積み立てた企業型DCは微益でよく、一生涯年金として受け取りたい方におすすめの制度です。
シミュレーションによると、25歳では1.25%の予定利率となり、転職時に50万円移換した場合、65歳から毎年38600円を一生涯受け取れるようです。

https://www.pr.pfa.or.jp/tsusan/index.html

移換額にもよりますが、iDeCo以外の選択肢として充分に検討できる制度かと思います。

放置すると自動移換されてしまう

企業型DCのある企業を離職して、私的年金について何も手続きをせずに放置することもできます。
放置して6カ月たつと、強制的に現金化され国民年金基金連合会に移換されます。
これが自動移換です。
罰則はありませんが、デメリットしかありませんので、放置は避けた方がよいでしょう。

自動移換中のデメリット
  • 運用されない
  • コストがかかる
  • 結局60歳まで引き出せない
  • 加入者期間にカウントされない

自動移換中は現金化されているので、その資産は運用されません。
よってお金は1円も増えません。

増えないどころか、コストがかかります。
移換時に4348円、その後毎月52円(年間624円)です。
つまり、資産は確実に減っていきます。

その上60歳まで引き出せないので、減っていく資産を指をくわえて見ていることしかできません。

さらに、DCは受け取りまでに最低10年間の加入者期間が必要ですが、自動移換中はカウントされません。
そうなると、60歳になっても受け取れない可能性があり、最長65歳からとなってしまいます。

…とデメリットしかありませんが、なんと日本で自動移換されたまま放置している人が127万人もいるのです。
年間624円×127万人=年間7.9億円が完全に無駄な手数料として消えているわけです。
他人事とは思えないくらいもったいないですよね…。

ということで、自動移換されないよう、離職して6ヵ月以内に何かしらの手続きをしましょう。


iDeCo公式サイト 業務状況 加入者の概況 2024年1月 より
https://www.ideco-koushiki.jp/library/status/

(参考)脱退一時金をもらう

条件を満たせば、企業型DCを脱退し、積み立てた資産を一時金として手にすることができます。
ただしその条件は非現実的なものとなっています。

(参考)転職先会社の企業型DCに入る

企業型DCを脱退できない選択肢です。
メリットは移換手続きが簡単であることです。
デメリットは、変わらず企業型DCを継続してしまうことです。

結局、企業型を脱退できる選択肢は?

iDeCoか通算企業年金に移換するのが現実的な選択肢となるでしょう。
通算企業年金は移管時の年齢と資産額によるところが大きいので、事前のシミュレーションは必須です。

もちろん、転職先の企業型DCの内容がよければそちらに加入するのもアリです。
ただ、企業型で選べる運用商品は、コスト(信託報酬)が1%前後と高めのものが多い印象です。
コストが高い商品を企業拠出で運用した場合と、コストが安い同じ商品をiDeCoで個人拠出で運用した場合とでは、運用期間が長くなるほど後者の方が給付時の手取りが良くなる傾向にあります。

長期・複利での運用はランニングコストが大きく影響しますので、商品選びはコストも意識しましょう。

まとめ

転職時に企業型DCをどう処理できるか概説しました。

ふたたび結論

【転職時の企業型DCの行き先候補】

  1. iDeCoへ移換
  2. 通算企業年金へ移換
  3. 放置する(非推奨)
  4. 脱退して一時金を手にする(条件次第)
  5. 転職先でも企業型DCに入る(参考)

個人的には、iDeCoに移換するのが最もよいかと思います。
それは、運用商品ラインナップが広まること、いつでも拠出を停止・減額できることが大きなメリットだと感じるからです。
ラインナップが多いと、年齢やリスク許容度によって運用商品を柔軟に変えられます。
また急に経済状況が悪化した際、拠出を停止できるのはありがたいのではないでしょうか。
企業型DCは個人が掛金を負担しなくてよいですが、その代わりに縛りが多い窮屈な制度となっています。

参考文献
https://ideco.kddi-am.com/learn/column/ideco0065/
https://note.com/yoshihiro_omori/n/n51598d722a25
https://www.pfa.or.jp/tsusan/index.html
https://www.ideco-koushiki.jp/retirement/
https://401k.sawakami.co.jp/kojin/column/433
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/portability.html
https://www.ideco-koushiki.jp/library/pdf/simplified_chart_2022OCT.pdf
https://www.ideco-koushiki.jp/library/#archive_entry__000062

※文中に出てくる具体的な投資商品などは、内容をわかりやすく解説するためだけに用いており、これらの商品への投資を勧めるものではありません。実際に投資するかの判断は自己責任にてお願いします。