記事内に広告を含む場合があります

雇用統計の株価への影響は?「強い」とどうなる?

この記事は約7分で読めます。

「雇用統計が近いから株価に気を付けようって言うけど、どういうこと…?」

いつも発表前に市場がざわつく雇用統計。

株を取引する上で、雇用統計のタイミングではどう立ち回ればいいのでしょうか。

この記事では、短~中期的なトレードで定期的に大損してしまう方に向けて、米雇用統計のタイミングの無難な過ごし方を、サクッと解説。

コツコツドカンに悩んでいる方も、読むだけで株の負けが減らせるかもしれません。

とりあえず結論
  • 雇用統計と株価の関係は、必ずしも連動しない
  • 雇用統計発表前後は株価の値動きが激しくなることが多い
  • このボラティリティでは、リスク回避に専念するのが無難
  • 結果を受けて米市場が上がっても、日本株も釣られて上がるとは限らない

スポンサーリンク

リスク回避に専念する

毎月第1金曜日に発表される、アメリカの雇用統計。
日本時間では、冬時間(12月~3月)は22:30、夏時間(4月~11月)は21:30に発表されます。
雇用に関する10以上のデータが発表され、中でも非農業部門雇用者数・失業率・平均時給の3つは特に重要とされています。

発表前後のタイミングでは普段より株価が大きく動き、思わぬ利確やロスカットをしてしまうこともあるかと思います。
この記事での結論として、雇用統計のタイミングでは利益狙いではなく、リスク回避の投資行動を取ることをおすすめします。

雇用統計と株価は連動しない

なぜ雇用統計付近はリスク回避に専念した方が良いかというと、雇用統計結果と株価は必ずしも連動せず結果に関係なく一時的に値動きが激しくなるからです。

一般には雇用統計の内容が強かったら、株価は上がる傾向にあるとされます。
強い内容とは、非農業部門雇用者数が増え失業率が減ったら、ということです。
ここは独特の表現がされるので、簡単に整理しておきます。

雇用統計の「強い」と「弱い」
  • 雇用者数が増えた、失業率が減った(景気が良くなった)
    → 強い、良い、堅調などと表現されます
  • 雇用者数が減少、失業率が増加(景気悪化)
    → 弱い、悪い、低調などと表現されます

雇用者数が増えれば個人消費が増え、企業収益も増え、企業の株価も上がる、と考えられます。

また、景気先行きの良くなったアメリカの魅力が増えるので長期金利も上昇しやすく、その結果ドルが買われます。
日本円との為替では円安ドル高になる傾向がある、とされます。
金利が上がりすぎると、今度は逆に株安への圧力が増してきます。

→ MUFG:なぜ「米国雇用統計」は重要指標なのか?

なぜ連動しない?

しかし実際は、雇用統計と株価の関係は安定していません。
それにはいくつか理由があると考えられます。

市場コンセンサスの基準がわからない

雇用統計の結果は、事前の予想値である市場コンセンサスとの差で判断されます。
結果が予想値より良ければ、市場にとってはポジティブなサプライズと受け止められます。
しかし、予想値より良くても「前回よりは伸びが悪かった」として株価が上がらないこともよくあります。
よく考えてみると、予想値自体も誰が何を根拠にどういう責任で算出しているかあいまいですよね。

結果が出るまで結局はギャンブル

統計結果は「前月比〇万人増」という表現でも判断されます。
しかし結果は発表されるまで誰にもわからないはずなので、前月比は結局ギャンブルとなってしまいます。
また過去に発表した統計結果は修正されることがあります。
重要指標の割によく修正されるとは、さすが自由の国ですね。

両社が乖離した場合の解釈がどう株価に反映されるか再現性がない

雇用者数が大幅に増えても、失業率がちょっとしか減らなかったら、その結果の解釈が割れることがよくあります。
また、予想値より良い結果でも前月より伸びが悪い、といった場合も割れることがあります。
良い結果でも必ずしも株価が上昇するわけではないのです。

為替変動によっては損をする

結果を受けて米金利が上がり為替が円安に動けば、日本の内需株にはマイナスのインパクトかもしれません。
その反面、日本の輸出関連銘柄にはプラスの影響となり得ます。
翌日の日本株が米国株に釣られて上がったのに、保有している個別株だけが逆行安になってしまう、とはよくあることですよね。

その時の市場の需給にも左右される

雇用者数が増えることは好景気への期待から株価が上がるとされていますが、好景気が過ぎる、つまりインフレ率が上がり過ぎると、政府は利上げをして景気にブレーキをかけます。
利上げは間接的に株価下落につながることが多く、それを見越して株価が反応します。
つまり、その時のインフレ率などを鑑みて、雇用統計の結果が良くても株価は下がることもある、ということです。
ここでも「利下げ期待観測が後退」などと独特な表現がされます。

なによりも要人発言のせい

2023年3月7日、FRBのパウエル議長が政策金利の引き上げ示唆と、必要なら利上げペース加速を示唆する発言をしました。
この直後からアメリカ株式市場は急落しました。
このように、雇用統計などの重要指標にいくら気を配っていても、要人の発言によって株価が急変動します。

これらの結果、統計内容に関係なく株価はランダムに動くことが多いのです。

連動しなかった例

例をふたつ示します。
ただし、この記事の内容を肯定させるために少し恣意的なデータを持ってきていることに留意ください。

2022年11月

2022年11月分の雇用統計では雇用者数の伸びが予想より多く、堅調な景気を示しました。
セオリー通りなら、アメリカの株価は上がるはずでした。
しかし実際は、この時期のアメリカは利上げ傾向にあったため、統計結果が強いと良すぎる景気を警戒してさらに利上げをするとみて、株価は下がるとの見方がされていたのです。
そして、実際に発表後のダウ平均は300ドル以上も下落しましたが、最終的にプラス34ドルという小幅変動でクローズしました。

つまり、雇用統計は強かったのに、株価はあまり変動しなかったのです。

2024年5月

2024年4月分の雇用統計では、雇用者数の伸びは予想よりかなり少なく、失業率は予想よりわずかに高く、平均時給は予想よりわずかに低い値でした。
これは弱い結果だったと言え、セオリー通りならアメリカの株価は下がるはずでした。
しかし実際は、この時期のアメリカの金利はかなり高い水準だったので、弱い結果を反映して利下げに動くと期待され、ダウ平均は450ドル上昇しました。

つまり、雇用統計が弱かったのに、株価は上昇しました。


このように、雇用統計と株価は必ずしも連動しないばかりか、逆に動くこともあるのです。

どう過ごすのが吉?

上記の例からわかることは、
・雇用統計と株価はセオリー通りに動かないこと
・株価が一時的に大きく変動すること

です。

特に、発表前後の値動きがいつもより荒くなることは毎回おなじみとなっているので、このボラティリティを避けるような投資行動を取れば、ローソク足で一瞬だけ現れた長ーいヒゲに刈られることは減らせるでしょう。

具体的には、ポジションを整理して建玉や保有株の一部または全部を手放したり、新たなポジションを持たないようにして静観する、などです。
これは日本株でも米国株でも同じことです。
実際、発表前はポジション整理のための売りが多くなる印象です。

これから毎月第1金曜日付近はいつもより少しだけ守りの投資行動を取る、と意識できれば、理由なき下落に慌てることもなくなるでしょう。

まとめ:雇用統計時はリスク回避が吉

ということで、今回はアメリカの雇用統計と株価の、実質的な関係についてまとめてみました。
ここまで読んでくれた方は、雇用統計のタイミングで静観することができ、急な値動きで損することも減るでしょう。

ふたたび結論
  • 雇用統計と株価への影響は、必ずしも連動しない
  • 雇用統計発表前後は株価の値動きが激しくなることが多い
  • このボラティリティでは、リスク回避に専念するのが無難
  • 結果を受けて米市場が上がっても、日本株も釣られて上がるとは限らない

堅実な資産運用の基本はリスクを避けることです。
雇用統計に関連して株価は動きますが、その向きや強度までは誰にも予想できません。
せっかく増やした資産をたった1回の雇用統計で散らさないためにも、月初めの金曜日はいつもより守りの投資行動を取るのが無難でしょう。

※文中に出てくる具体的な投資商品などは、内容をわかりやすく解説するためだけに用いており、これらの商品への投資を勧めるものではありません。実際に投資するかの判断は自己責任にてお願いします。