「相関係数がマイナス1の資産を半分ずつ持てばいいってコト…?」
その考え、ちょっともったいないかもしれません。
- 相関係数は、2資産間の値動き方向がどれくらい似ているかを表す
- 資産配分(アセットアロケーション)を練るための指標
- 未来の価格変動を保証するものではなく、あくまで過去のデータ
- 他の指標と組み合わせて使用する
この記事では、投資における相関係数と、その上手な使い方をサクッと解説。
これを読めば相関係数について理解できる上、自力での算出もできるようになりますよ。
相関係数ってなんだっけ?
相関係数は、2つの変数がどれくらい同じ方向に動くかを示す指標で、マイナス1からプラス1の範囲で表します。
投資の世界では一般的に、以下のように説明されます。
- 1は正相関:2つの資産の値動きは同じ方向
- 0は無相関:2つの変数は全く関連していない
- -1は逆相関:2つの資産の値動きは逆方向
相関係数がゼロ付近~マイナスである2つの資産クラスを持つことで、全体のリスクを減らすことができるとされています。
これは、一方の資産が下落したときに、他方の資産が維持もしくは上昇する可能性があるためです。
次章で最新の数値を出しながら解説しますね。
相関係数一覧と算出方法
主な資産クラスの相関係数
まず、2024年9月30日現在の相関係数をみてみましょう。
この画像はJ.P.モルガン・アセット・マネジメントのウェブサイトから引用しました。
(https://am.jpmorgan.com/jp/ja/asset-management/per/insights/market-insights/guide-to-the-markets/)
この表によると、直近10年の日本株式と日本国債の相関係数はマイナス0.18です。
これは、日本株が上昇しているときに国債は値下がりする傾向が、少しだけあるということです。
また、直近10年の米国株式と世界株式の相関係数はプラス0.97です。
これは、米国株が上げているときには世界株式も上がる傾向が、強めに出ているということです。
ということで手っ取り早く相関係数を知るには、金融関連会社が定期的に算出している数値を参照することです。
ただ、この方法では大まかな資産クラスの相関しかわかりません。
自分が運用したい金融商品の相関を知るには、次に紹介する方法で自力で算出してみましょう。
個別株やアクティブファンドの相関係数も、自力で調べることができるようになりますよ。
算出方法
Excelでたったの2ステップです。
小テストの平均点を求めるくらい、めちゃ簡単です。
順に説明します。
ステップ1:データをダウンロード
ウェルスアドバイザーで金融商品を検索し、月次リターン(CSV)をダウンロードする方法です。
▼トップページ上段の検索窓に調べたい商品名を入力。部分的なキーワードでもokです。
▼商品ページの「チャート」タブにして、下の方にある「リターンデータダウンロード」を選択
▼中段の「月次リターン」でデータが欲しい期間を選択し、「ダウンロード」を選択
▼ダウンロードしたCSVファイルを開くと、こんな感じ
以上を繰り返し、相関係数を調べたい2つの金融商品のCSVデータをダウンロードしたら準備完了です。
ステップ2:Excelで計算
今回は2020年9月~2023年8月(3年間)の、eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)とeMAXIS Slim国内債券インデックスの相関係数を計算してみます。
▼2つのデータを、期間が一致するように注意して1つのエクセルに並べます
▼空いているセルに、「=CORREL(A,B)」という形で入力します。今回はAにTOPIXの全データを、Bに国内債券の全データを入れました。CORREL関数はcorrelation coefficient=相関係数を返す関数です。
▼計算終了!相関係数はプラス0.309と出ました。先ほど引用したJPモルガンの画像のとおりですね
投資戦略
資産全体の低リスク化を目的として、相関係数が低い資産を組み合わせる、という戦略が基本です。
例えば、相関係数がプラス0.1の日本株式と日本国債を持つとします。
相関係数はゼロに近く、株の下落に債権が引っ張られづらいと考えられるため、100%株式を保有するよりは全体のリスクが低くなると言えます。
逆に、相関係数がプラス0.9の日本株式と米国株式を両方保有した場合、上昇も下落も一緒に動きやすいので、ハイリスクハイリターンな資産配分だと言えます。
50%ずつ持つと?
ここで冒頭の、相関係数がマイナス1の資産を半分ずつ保有する場合を考えます。
株100%のときよりリスクが大幅に低くなりました(22.15%→8.37%)。
ただし期待リターンも低くなっています。
相関係数がマイナス1の組み合わせでは、確かにリスクを低くできるでしょう。
しかしリターンも相殺されてしまうのです。
働きながら資産運用をする方にとって、債券50%はローリスクすぎると言われています。
つまり、もっとリスクを取って期待リターンを高く設定した方がよい、ということです。
ここから期待リターンを高くするためには、株の割合を増やし国債を減らすことになります。
しかし株を増やしすぎると再びリスクが首をもたげてきます。
また、REITなど他の資産クラスを混ぜることもできます。
この戦略で一定の支持を得ているのが、現代ポートフォリオ理論(MPT)と言われているものです。
今回のシミュレーションは「投資のガイド ファンドの海」にて行いました。
ここで実際に皆さんが数値を入力しながら、個人のリスク許容度に応じたリスク/リターン割合を探すことが大切です。
リスク許容度や、一例としての望ましい資産配分については、以下の記事でも解説しています。
知っておきたい落とし穴
便利な指標に思える相関係数ですが、注意点があります。
- 相関係数はあくまで過去のリターンをもとにした指標のため、常に変化します。
つまり、未来の相関を確約するものではないということです。 - 2資産の変動方向の関連度を示すだけで、変化量の目安にはなりません。
つまり、値動きの幅まではわからないということです。 - 世界的な暴落など極端な相場のときは、相関に関係なく動くことがあります。
例えば2020年のコロナショック時は、負の相関になっているはずの資産クラスが全て下落しました。
ただし、月や年といった中長期でみれば、ちゃんと負の相関になっています。 - 相関係数はポートフォリオの評価には使えません。
具体的な金融商品の保有割合ではなく、あくまで資産クラスの配分(=アセットアロケーション)に関するお話だからです。
ポートフォリオとアセットアロケーションの違いについては、以下の記事でも解説しています。
対策は?
相関係数だけに頼らず、他の指標と合わせて判断しましょう。
例えば、各金融商品ごとの期待リターンやリスク、連動するインデックスや、自分のリスク許容度、投資目標などがあるでしょう。
ドル建て生命保険に加入している人は、既に米国の金融資産に投資していると考えられるため、追加で米国株などを保有しない、という方針をとることもできます。
まとめ:相関係数は万能ではない
ということで、今回は投資の相関係数についてまとめてみました。
- 相関係数は、2資産間の値動き方向がどれくらい似ているかを表す
- 資産配分(アセットアロケーション)を練るためには重要な数値
- 未来の価格変動を保証するものではなく、あくまで過去のデータ
- 他の指標と組み合わせて使用する
ここまで読んでくれた方は、どんな金融商品でも自分で相関係数を計算できるようになっているはずです。
ロボアドバイザーに、「株だけでなく債券も保有しましょう」といったフワリとしたアドバイスだけもらっていて、具体的な保有割合がわからずに困っていた方。
今日からは自分でその先に進むことができるわけです。
途中でも紹介しましたが、簡単にリスクのシミュレーションができるサイトとして、投資のガイド ファンドの海(のアセットアロケーション分析)をおススメします。
条件には資産の額や比率を指定でき、相関係数も好きな値に設定できます。
結果には数値だけでなく、現代ポートフォリオ理論で出てきた効率的フロンティアの散布図上でどのあたりに位置するのかもわかりますので、視覚的にもシミュレーションしやすいと思います。
現代ポートフォリオ理論については、以下の記事でも解説しています。
また、おすすめの勉強本も紹介していますので、興味があればどうぞ。
メジャーなネット証券4社を比較してみた記事もあります。
巷では「アセットアロケーションが全て」という言葉があるくらい、資産配分は重要とされています。
「全て」というのはさすがに極端ですが、数ある投資戦略の中でそれなりのウエイトがあることは間違いありません。
うまく活用して、納得できる投資を目指しましょう!
※文中に出てくる具体的な投資商品などは、内容をわかりやすく解説するためだけに用いており、これらの商品への投資を勧めるものではありません。実際に投資するかの判断は自己責任にてお願いします。