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1億円の壁って何?グラフの見方もわかりやすく解説

この記事は約5分で読めます。

「1億円の壁ってなに…」

金融所得課税の話には必ず出てくる、1億円の壁というワード。

話題についていくためにも、この記事でサクッとインプットしましょう。

読めば経済ニュースがもっと理解できるようになりますよ。

とりあえず結論
  • 1億円の壁とは、合計所得1億円超で税負担率が下がる傾向のこと
  • 要因は、株などの金融資産への税率が固定されていること
  • 「金持ちなのに税負担が少ないぞ」という不公平感から、問題視されている
  • 金融所得に対する税率を上げて、不公平感を緩和しようという動きがある
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1億円の壁とは?

1億円の壁は、合計所得金額が1億円を超えると、所得に比べて税負担率が下がる傾向のことです。

金持ちになると株による所得が増える傾向にあり、その利益への税金は固定税率です。

詳細は後述しますが、要するに給料よりも株で儲けるほうが手取りが多くなるんですね。

合計所得金額(給与所得とその他の所得の合計)がだいたい1億円を超えると、すべて給料として稼ぐより安い税金で済む、というのが1億円の壁です。

グラフでわかる「1億円の壁」

1億円の壁についてググると、謎の折れ線グラフが出てきます。
グラフ自体について解説しているネット記事はないので、本稿では少し詳しくみていきましょう。

出典:https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/4zen19kai2.pdfをもとに筆者作成

縦軸は所得に対する税負担率で、税金÷合計所得金額×100[%]と考えることができます。
横軸は合計所得金額で、給与だけでなく事業、不動産、雑所得など、複数の所得を合計したものです。
(このグラフの描き方はこちらの記事で紹介しています)

合計所得金額(横軸)が1億円のあたりが、1億円の壁です。
ここは最も税負担率が高い、ざっくりいうとコスパが悪い所得ゾーンともいえるでしょう。
このグラフからは、1億円ジャストはコスパが悪いことがわかります。

壁を超えるとグラフは下がっていきますが、これは所得に対して税金の負担率が下がっていることを示します。
例えば、5000万円クラスなら負担率は26.0%ですが、10億円クラスなら22.9%で済みます。
壁を大きく超えると、支払う税金自体はおそらく多くなりますが、所得全体からみた税率は低くなるんですね。

「壁」ができる理由

なぜ1億円付近を境に税負担率が下がるのでしょうか。
それは、合計所得が1億円を超えると、給与に加えて金融所得が増えてくる傾向があるからです。

金融所得は税率が一律約20%となっていて、高額の場合は給与の累進課税よりも安くなっています。

つまり、安い税率で多く稼ぐようなるので、所得全体の税負担率は小さくなります。

ピッタリ1億円を境に壁があるのではなく、「これくらい稼いでいる人たちは、金融所得の割合が多いよ」ということですね。

なにが問題?

1億円の壁がよくないと言われるのは、その稼ぎ方に問題があるからです。

同じ所得額でも、すべて給与所得として稼げば最大55%課税(所得税+住民税)され、半分以上が税金で取られます。
ところが金融所得なら、いくら稼いでも約20%しか課税されません。
ちょっと雑ですが、例えば3億円がすべて給与所得なら手取りが1億5000万円弱となり、金融所得なら2億4000万円となるわけです。

じゃあみんな金融所得で稼ぎたくなりますよね。
しかし、金融所得を得るためには株・投資信託などの金融資産を運用する必要があるため、必然的にお金持ちの人しか手を出せない稼ぎ方です。
金持ちだけが株を使い、真面目に働くよりも安い税金でさらに稼ぐことができる、というのが今の状態です。

これについて、庶民からすれば「金持ちなのに税金安いなんてズルいぞ!」という不満の声があります。
また国からすれば金持ちから取れる税金が減り、税収が減ります。
これは国会議員も問題視しているようです。

→ 自民党・石破茂氏、金融所得課税の強化「実行したい」 – 日経新聞

金持ちからすればせっかく効率よく稼げているわけですが、国会議員が制度改正に動き出したらどうすることもできませんよね…。
ちなみに国会議員の平均年収は2500万円くらいなので、議員の中にも1億円の壁に不公平感を抱いている者が一定数いると考えられます。

→ 国会議員の去年の所得公開 平均2530万円 最多は7億4679万円 – NHK

金融所得課税が増税される?

1億円の壁を崩すため、金融所得の税率が20%→30%程度に増税されそうな動きがあります。

まだ議員の個人的な考えレベルなので、増税実施の有無・対象者・時期などすべてが未定です。

本稿を書いている時点では、年間所得30億円を超える超富裕層がターゲットになりそうな発言があります。

ただしこれでは新たに30億円の壁を作るだけになってしまい、1億円の壁の是正にならないので、実際の増税対象はもっと低い所得層となるかもしれません。

→ 超富裕層は税負担がなぜ軽い…金融所得課税が総裁選の焦点に、強化はNISA時代の「貯蓄から投資」に逆行って本当? – JBpress

まとめ:どうせなら超えたい壁

今回は、所得の1億円の壁についてまとめてみました。

ふたたび結論
  • 1億円の壁とは、合計所得1億円超で税負担率が下がる傾向のこと
  • 要因は、株などの金融資産への税率が固定されていること
  • 「金持ちなのに税負担が少ないぞ」という不公平感から、問題視されている
  • 金融所得に対する税率を上げて、不公平感を緩和しようという動きがある

我々庶民からすれば不公平感のある現状ですが、ぜひとも壁を超えた先の軽減税率ゾーンに到達したいものですね。

金融所得課税が強化されれば、庶民には影響がないままで税収が増えるので、公共サービスの充実が期待できるかもしれません。

例えば公共図書館がパワーアップしてくれれば、金融関連の本が今よりたくさん無料で読めるようになるので、マネーリテラシーを磨いてマネ活が捗りますね!

参考文献
申告所得税標本調査結果 – 国税庁

1億円の壁とは? 超富裕層にかけられる新金融所得課税の狙いと今後 – ARUHIマガジン

1億円の壁 – 浅田会計事務所

合計所得金額とは – 国税庁