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5月に売るのは遅い?4つの投資アノマリーを紹介

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「セルインメイって言うからには、5月に株を売ればいいってコト…?」

よくよく考えたら、みんなが5月に売ったら全銘柄でストップ安になってしまいますね。
なぜそうならないのでしょうか。

この記事では、季節のアノマリーについてサクッと解説。

アノマリーだけでずっと儲けられるわけではありませんが、知っておくと株価が変動しても動揺せずに済むでしょう。

とりあえず結論
  • 季節のアノマリーに再現性はない
  • 勝率はよくても実利益ではマイナスになる可能性も
  • セルインメイで5月に売るのでは遅い
    → 5月以降の下落トレンドの前に売り抜けるのが正解
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季節のアノマリーって?

アノマリーとは、根拠はないけど、経験的に特定の時期によく見られるマーケットの変動のことです。

身近なものでは曜日効果というものがあります。
これは、月曜の株価は下がりがち、金曜は上がりがち、というものです。
ただ、アメリカの季節を基準としていることもあり、そのまま日本の市場に適用するのはタイミングがずれてしまうこともあります。

そもそも論理的な根拠は何一つないので、アノマリーどおりに売買したからといって永続的な利益となるわけではありません。
アノマリー頼みでトレードするのではなく、相場が変動したときの後付けの理由として、投資トークのネタ程度に考えておくのがよいでしょう。

セルインメイ(Sell in May)というアノマリーを考察する(マネクリ

それでもなぜ、アノマリーが起こる?

  1. 昔から言われている格言だから
  2. 相場変動で損しても、アノマリーのせいにできるから
  3. みんながアノマリーに沿って売買するから、という安心感から

などが考えられます。

個人投資家に最も影響しそうなのは理由3でしょう。
人は合理的な判断をするよりも、多くの人と同じ行動を取ることに安心感を抱き、周りに同調する傾向があります。
これを行動経済学でのハーディング現象といいます。

コロナ期間中にサージカルマスクが品切れになりましたよね。
それまでのペースで買っていれば品切れにならないのに、周りが焦るのをみて自分も大量に買った、という方もいるかと思います。
そして家にある大量のマスクの箱をみて安心するのです。

季節のアノマリーの一因として、これに近い心理が原因だと考えられるでしょう。

ハーディング現象(野村證券 証券用語解説集)

1、5、9、12月効果を紹介

アノマリーにはマイナーなものからメジャーなものまでたくさん提唱されています。
ここでは4つを紹介します。

ちなみに参考にした本は以下のものです。

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1月効果

1月に小型株を中心に値上がりする、というアノマリーです。
成書によると、12月末に小型株を買って1月の最初に売れば、大型株よりも約4%のアウトパフォームだと述べています。
そして1月中旬ごろには1月効果はほとんど消滅するようです。
これは、日本含む多くの国で見受けられるアノマリーとなっています。
また、後述する12月効果とセットで考えることができます。

確実な原因は誰にもわかりません。
個人投資家が節税目的で12月に保有株を売り、年末ボーナスを手にした投資家が年始に一括投資を始めるから、などと言われています。
実際、年明けの個人投資家による買い注文は、売り注文よりも多いとされています。

5月のsell in May

セルインメイとして有名なアノマリーです。
「株は5月に売れ」と訳されますが、中身は「5月以降の下落期が来る前に売り逃げろ」という経験則なので、5月になって株価が下がってから売るのでは遅い、と認識しておく必要があります。

実はこの格言には続きがあります。
― but remember to come back in September (9月には戻ってこい) です。
つまり、5月から数ヵ月間は下落期となるが、9月くらいで底打ちするので、再び市場に戻っておいで、という意味です。
ということは、これは後述する9月のアノマリーとセットで考えることになります。
実際に5月から数ヵ月間のダウ工業平均株価は、それ以外の期間と比べて低い傾向にあります。
あくまで傾向にあるだけですが…

噂されている原因のひとつとして、9月から始まる米国の新学期に関係しているとされます。
6~8月の夏休みには投資の手仕舞い(手持ちを売る)をするから、という解釈です。
これは、日本でも年度末である3月に売られる傾向にあるのと同じですね。

5月に売り逃げろ(野村證券 証券用語解説集)

9月効果

9月は年間で最も悪い月である、という経験則です。
1885年にダウに投資した1ドルは、2006年に490ドルになっているという試算があります。
しかし、9月にだけ投資していた場合は23セントになり、9月以外の全ての月で保有していたとすると2176ドルにまで増えていたようです。
9月はそれだけパフォーマンスに悪影響だということですね。

上述した5月のアノマリーに続く下落基調の出口ということで、5~9月のアノマリーとしてひとまとめで考えることになります。

なお、続く10月は暴落が集中しています。
え…9月に戻ってこいって言ったじゃん…?

12月効果

クリスマス後から年始にかけて株価が上昇しやすい、というものです。
クリスマスラリー、サンタクロースラリーとも呼ばれます。
年末になると必ず話題になるほど有名なアノマリーです。

年末の節税目的の売りと、それによって割安になった株への買いが年始に入る、という構図は1月効果と連動していると考えることができます。


4つのアノマリーを紹介しましたが、年末年始のアノマリーと5~9月のアノマリーの2つに大別できますね。
年末年始のアノマリーについては、次章で検討します。

アノマリーだけでは勝てない

アノマリーという考え方が蔓延しているなら、その通りに買えばみんな儲かるじゃないか、と考えますよね。
しかし実際は勝てません。
なぜなら、

  • アノマリーには再現性がないから
  • みんなが他人の先をいこうとするから
  • 売買する資産や目安にしている指標が違うから

などが考えられます。

アノマリーには一切の論理的根拠がありません。
これはどの文献にも書いてあり、根拠がないものに再現性を求めるのは無理があるでしょう。
半年後の天気予報の方がまだ論理的といえます。

またパラドックスとして、みんながアノマリーに乗っかるとわかっているなら、それよりワンテンポ先に売買すれば利益を最大化できるんじゃないか、と考えたくなりますよね。
私も常に考えています。
しかしそうなると最終的にはアノマリー自体が薄れ、年間を通してパフォーマンスが平準化されるでしょう。

それでも多少のアノマリーが生きているのは、先述したハーディング効果や、機関投資家など大口の投資家が市場を誘導しようと吹聴していることなども一因でしょう。
機関投資家は私たち個人投資家と違って気楽にトレードできませんからね…。

そして、売買する銘柄や目安にしている指標がみんな違うことも、アノマリーの再現性がブレる原因でしょう。
個別株しか売買しない人もいますし、TOPIXなどの指数を部分的に買い増すだけの人もいます。
ある人は移動平均線のデッドクロスで買い、ある人はボリンジャーバンドの+2σタッチで売る、など、人によって目安にしているインジケーターも異なります。
それらは結局、他人より先んじようとする心理が根底にあります。

1月および12月効果の検証

ここで、年末年始の株高のアノマリーを検証してみましょう。

条件
  • 12月25日の次の営業日の始値で買い、翌年の2営業日目の終値で売る。
  • 2013年末~2024年始の10年間で、ダウと日経平均のそれぞれを1株だけ売買する。
  • 年始の方が上がれば勝ち、下がれば負け、とする。

結果は、ダウは7勝3敗でトータル1312ドルのプラス、年最大のマイナスは534ドル、プラスは845ドルでした。
日経平均は6勝4敗でトータル699円のプラス、年最大のマイナスは895円、プラスは792円でした。

ダウ平均の結果。単位はドル(筆者作成)
日経平均の結果。単位は円(筆者作成)

どちらもプラスで終わっていますし、良くて勝率7割ではありますが、もう一年検証したらトータルマイナスで終わるかもしれない水準です。
ここから言えることは、勝率は辛うじて50%以上ですが、実利益でみれば安定して稼げるとは言えない、ということです。
12月効果は再現性が高いと言われていますが、簡易的な検証ではこの程度のパフォーマンスでした。

またこれは指数で検証しましたが、個別株となると完全に話が別になります。
個別株は株価が企業単体の事情に左右されることが多く、アノマリーやテクニカル指標どおりに値動きしないことが多いのです。
例えば2022年3月の日野自動車(7205)は、一部のトラックとバスのエンジンの排出ガスのデータ改ざんが発表された影響で、3日間で37%も暴落しました(1050円→654円)。

日野自動車(7205)の2022年3月付近のチャート。筆者作成

RSIもスローストキャスティクスもボリンジャーバンドでも、明確な値動き方向を示すシグナルはなし。
オシレータは設定によって結果が変わるため、あえてオシレータは重ねて表示していません。
付近の日経平均はどちらかというともみ合い相場でしたが、日野自動車だけ暴落したといえます。


年末年始のアノマリーは10年と短いクールで検証しましたが、期間を変えるとまた違う結果になります。
また、ただでさえ不確実なアノマリーは、特に個別株の個別材料には太刀打ちできないのです。

結局どう考えれば?

アノマリーは過信せず、気休め程度に考えておくのが安全ではないでしょうか。

しかし、勝率だけをみればまったくのゼロではないので、もしトレードのタイミングを調整できる余裕があり、決断する材料に悩んでいるのであれば、おまじない程度にアノマリーを加味してみてもいいかもしれませんね。

特に投資のタイミングを毎月の積立にするか一括にするかなどで迷っている場合は、夏に下がりがちなアノマリーを利用できればスッキリするかもしれません。
つまり、その年に買う分を5月から10月の6ヵ月の間にすべて買い切る、などの戦略が立てられるでしょう。

…自分で書いていて恐縮ですが、我ながらいい作戦に思えてきました。
ただし戦果の責任は取れませんのであしからず(^^

まとめ:アノマリーは気休め程度に

投資での季節のアノマリーについて概説しました。

ふたたび結論
  • 季節のアノマリーに再現性はない
  • 勝率はよくても実利益ではマイナスになる可能性も
  • セルインメイで5月に売るのでは遅い
    → 5月以降の下落トレンドの前に売り抜けるのが正解

投資タイミングがどうしてもわからないときは、おまじない程度にアノマリーを当てにしてみてもいいかもしれません。

ただしアノマリーだけでは恒常的に儲けられませんし、9月カムバック vs.10月暴落のように格言同士で矛盾することもあります。
資金の一部だけ売買してみたり他の指標も使ったりして、一攫千金を狙わないトレードを心がけたいですね。

※文中に出てくる具体的な投資商品などは、内容をわかりやすく解説するためだけに用いており、これらの商品への投資を勧めるものではありません。また引用先のサイトの情報をもとに投資行動を行った結果についても、引用先および当ブログでは一切の責任を負いません。実際に投資するかの判断は自己責任にてお願いします。