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NISAなのに課税?米国ETF配当金の二重課税を計算しよう

この記事は約7分で読めます。

「VYMに投資して、貯金しながら配当金をゲットしたい」

そう考える方も多いかと思います。

しかし外国株・ETFの配当金は、NISAであっても課税されてしまうことをご存知でしょうか。

とりあえず結論
  • 外国株・ETFの配当金は二重課税される
  • 対策はNISAが最も強力、次に外国税額控除
  • 何も対策しないのは、ただの損
  • 為替の影響は回避できない

この記事は、米国株・ETFの二重課税とその対策について知りたい、という方に向けて、具体例を出しながらまとめています。
正確な計算式も載せていますので、読み終わる頃にはきっと自分で課税額を計算できるようになりますよ。

「投資信託とETFってどう違うの?」という方は、以下の記事もどうぞ。

なお、この記事では便宜上、譲渡益のことを売却益、分配金のことを配当金、特定口座(源泉徴収あり)のことを課税口座と表現します。

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いい作戦だと思ったのに…

「NISAは利益に非課税だし、じゃあ高配当の米国ETFを保有して配当金をフルでゲットだ~」
という作戦は一見よさそうに思えます。
確かにNISAでは株などの利益に課税されないので、利益を総取りできると考えがちです。

が、配当金についてはNISAでも課税されてしまうパターンがあるのです。
それには、外国資産に投資したときの国際的な二重課税というシステムが関係しています。

二重課税の具体的な仕組みをみていきましょう。

二重課税の仕組み

二重課税とは、外国株・ETFからの配当金に、外国と日本で2回課税されてしまう制度のことです。
外国とは米国に限らず82ヵ国あり、日本とOECDモデル租税条約を締結している国々が対象です。
米国株を例に、二重課税を具体的に計算してみましょう。

課税口座で配当金が出たら(二重課税)

配当金には、米国現地でも課税されます。
よって、米国で10%、残りの金額に日本で20.315%課税されます。

イメージでは、1万円の配当金が出たとすると、まず1万円から10%引かれて9000円となります。
その9000円に対してさらに20.315%引かれ、最終的な手取り配当金は7171円です。

二重に課税されるせいで最終的な税率は28.29%となっています。
ちょっと取られすぎですよね…。

二重課税を正確に計算する

ただし正確な計算のためには為替を考慮します
マネックス証券のページに詳しかったので、数値を簡単にして紹介します。

例えばある株を100株持っていて、1株あたり0.5ドルの配当金が出るとします。
申告為替レートは1ドル150円、配当金計算用の為替レートは1ドル148円とします。

配当金総額:0.5ドル×100株=50ドル
米国での課税額:50ドル×10%=5ドル
利益残り:50ドル−5ドル=45ドル
日本での課税額:45ドル×150円×20.315%=1371円
ドル換算の課税額:1371円÷150円=9ドル

これらを駆使して、ドルと円それぞれでの手取りを計算します。
最終手取り(ドル):45ドル−9ドル=36ドル
最終手取り(円):45ドル×148円-1371円=5289円

もとの配当金が50ドル×150円=7500円なのに対し、円での最終手取りは5289円と、29.48%も減ってしまいました。
これは、円で配当金を受け取るまでに2つの為替レートを経ていることが原因です。

為替の影響はコントロールできないため、投資の不確定要素のひとつになっています。

二重課税への対策は?

せっかくの利益への課税を減らすために、いくつか対策を紹介します。

NISA口座を使う

NISA口座であれば、課税口座よりも取られる税金を減らせます。
20.315%課税をブロックできるのは大きいですよね。
ただしNISAは日本国内の税制なので、外国での課税は回避できません。
つまり配当金に対して米国で10%課税、日本では非課税となります。

1万円の配当金が出た場合、米国で10%課税されて、手取り配当金は9000円です。

為替を考慮した先の例では、日本での1371円の課税をされずに済みます。
円での最終手取りは6660円となります。
フル課税の5289円よりも少しはマシになりました。

ただし、NISAであっても為替の影響は食らってしまいます。
安く買って高く売れたとしても、売却時に円高だと、円換算で損失となる可能性が充分にあります。
NISAでの損失は損益通算できないので、絶対にリカバーできない損失となってしまいます。

また、外国株やETFは、NISAの2つの枠のうち成長投資枠でしか売買できません。
成長投資枠だけの非課税保有限度額(買える金額)は年間240万円までです。
年間240万円枠は頻繁に売買するとすぐに使い切ってしまい、翌年まで復活しません。
NISAルールに注意しましょう。

NISAについては以下の記事でも紹介しています。

外国税額控除を受ける

外国税額控除とは、二重課税のうち米国で課税された10%を還付金として取り戻せる制度です

これには確定申告が必要となります。
また、国内外の所得によっては全額が控除されないこともあります。

ただし、東証に上場していて2020年以降に設定された、外国資産に投資する投資信託では、自動で外国税額控除される制度があります。
投資信託の二重課税調整制度といいます。
この制度の対象かどうかは商品によりますので、別途確認が必要です。

また、NISAでは外国税額控除を受けられません。
外国税額控除は二重課税を回避するための制度で、NISA口座ではそもそも二重課税となっていないからです。
NISAかつ外国税額控除ができれば完全非課税を達成できるのですが、併用できない制度なのです。

外国に投資しない

めちゃくちゃ極論ですが、二重課税で悩みたくないなら外国に投資しなければいいのです。
特に米国は成長が目覚ましく、S&P500指数を見ても躍進している「儲かりそうな」市場ではあります。

しかし外国には株価の値幅制限がない市場もあるし、なにより為替の影響は避けられません。
NISAで日本に投資すれば、売却益も配当金も完全非課税とすることができます。

完全非課税で配当金を狙うなら、日本の高配当株ファンドなどが該当するでしょう。
私サクリが気になっているのは、「SBI日本高配当株式(分配)ファンド(年4回決算型)」という投資信託です。
信託報酬は0.099%と安いです。
ただし設定日が2023年12月12日となっており、始まってまだ1ヵ月ほどしか経っていない商品です。
よってトータルリターンなどの長期実績データはありません。
また、SBI証券でしか購入できません(2024年1月20日現在)。
最近まで構成銘柄が開示されていませんでしたが、2023年12月29日基準の月次レポートによると、具体的な銘柄名が載っています。
銘柄数は30と分散は弱めです。

不確定要素が多い商品ですが、キャピタルゲイン(売却益)ではなくインカムゲイン(配当益)を狙っての保有は充分アリだと思います。
私は2025年からこのファンドを買うために、新たにSBI証券を口座開設しました。

SBI証券

まとめ:NISAをうまく活用しよう

ということで今回は、外国株・ETFの配当金に二重課税される仕組みについてまとめてみました。
ここまで読んでくれた方は、二重課税についての理解はバッチリでしょう^^

ふたたび結論
  • 外国株・ETFの配当金は二重課税される
  • 対策はNISAが最も強力、次に外国税額控除
  • 何も対策しないのは、ただの損
  • 為替の影響は回避できない

二重課税への対策では、20.315%課税をブロックできるNISAが最も強力です。
次いで外国税額控除が有効です。

いずれにしても、何も対策せずにフル課税されるのはもったいなさすぎます。
せっかくの利益を減らさないためにも、何らかの対策をしましょう。

※文中に出てくる具体的な投資商品などは、内容をわかりやすく解説するためだけに用いており、これらの商品への投資を勧めるものではありません。実際に投資するかの判断は自己責任にてお願いします。

参考文献
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/tax_convetion_list_jp.html
https://info.monex.co.jp/us-stock/guide/tax01.html
https://info.monex.co.jp/us-stock/basic-guide/knowledge/tax.html
https://www.smbcnikko.co.jp/products/stock/foreign/usa/knowledge/002.html
https://faq.rakuten-sec.co.jp/2213002
https://biz.moneyforward.com/tax_return/basic/55280/#i-3
https://site0.sbisec.co.jp/marble/fund/detail/achievement.do?Param6=18931123C