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日経平均、なぜこんなに下がる?8月の暴落背景を考える

この記事は約8分で読めます。

「保有株が全部暴落してる…なんでや!」

2024年8月の世界同時暴落はまだ続いています。

しかしなぜ、こんな大規模な暴落となっているのでしょうか。

この記事では、FP(3級…)を持つ筆者が、初心者向けに2024年8月の日本株急落について、ニュース記事を統合して考察します。

読んでも含み損は解消できませんが、暴落の基本的なメカニズムは把握できるはずです。

知識を得れば、今後の暴落耐性もちょっとだけ強化できるかもしれませんよ。

※この記事は2024年8月6日深夜時点での情報に基づいています。

とりあえず結論
  • 日銀の利上げは株価にマイナスのインパクトだった
  • アメリカの雇用統計内容もマイナスのインパクトだった
  • それらの発表がほぼダブり、マイナスの相乗効果として暴落した
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暴落付近の動きをおさらい

■2024年7月は、既にかなりの円安でした。
一時は1ドル=161円という水準に達していました。

■7月31日(水)の日中に、日本銀行(日銀)が金利を上げることを発表。
政策金利を「~0.1%程度」から「0.25%」へ引き上げることを決定。
(→ zakzak by 夕刊フジ)

■日本時間で8月2日(金)の夜、アメリカの雇用統計(7月分)が発表。
アメリカの景気悪化を示唆する内容でした。
(→ ブルームバーグ)

■8月5日(月)、日経平均の終値が前日比マイナス4451円という、バブル崩壊時を超える史上最悪の値幅で暴落しました。

これらはどのように関係しているのでしょうか。

原因1:日銀が利上げした

日銀が金利を上げました。
金融引き締め・利上げともいいます。
金利が上がると、株価が下がる傾向にあります。

金利はお金のレンタル料です。
金利が上がると、企業は銀行からお金を借りづらくなります。
レンタル料が高くなったからです。
そうすると、企業は新たな設備投資などができなくなって成長が鈍り、将来の業績悪化が心配されます。
将来が怪しい会社の株は誰も買いたがらないし、保有している人は売り払います。
売り注文が殺到し、株価がどんどん下がっていくという仕組みです。

また金利が上がると、預金しているだけでもらえる利息も増えます。
つまり、下落している上にもともとハイリスクな株ではなく、堅実な預金や債券で儲けようする人が増えます。
そうなると、手元の株を売り払って別の資産にする動きが強まります。
株が売られる=値下がりします。

利上げ発表の2日後、日経平均が2000円以上も値下がりする暴落となりました。

原因2:雇用統計が悪すぎた

アメリカの雇用統計は、発表のたびに再現性のない大きな値動きを誘発する経済指標です。

2024年8月2日に、7月分の雇用統計が発表されました。
この内容が特に悪く、要はアメリカの景気悪化(景気後退)を示すものだったのです。
→ 明治安田総合研究所 調査レポート)

普段の雇用統計では、予想値より悪い内容でもその後の景気対策を期待して株価が上がる、ということがよくあります。
しかし今回は予想をはるかに下回る内容だったため、将来への期待よりも失望によるショックが勝り、アメリカ市場も大幅に下落しました。
日本株は下落だけはアメリカ株に連動する風潮があるので、そこからはもう理屈ではなく「アメリカが暴落したから」というだけで、週明けの日本株も暴落しました。

最悪だったのは、日銀の利上げ発表とアメリカ雇用統計が同じ週にあったことです。
日銀利上げで下落ムードが漂う中、雇用統計でさらに下落し、歴史的な暴落を呼びました。
SNSでは「なんでそのタイミングで利上げ発表すんだよ…」という日銀への恨み節で溢れていました。

原因3:円高ドル安になったから

為替で考えると、金利=通貨の魅力です。

日銀の利上げによって円が魅力的となるため、ドルを売って円を買う動きが強まり、円の価値が上がる=円高になりました。
実際、利上げ発表前は1ドル150円台でしたが、発表後は140円台でフィニッシュ、つまり円高よりになって取引終了となりました。

一方アメリカは雇用統計で景気悪化が示唆されたため、景気対策として利下げ実行が確定的となりました。
アメリカの利下げによりドルの魅力が下がり、どうせ通貨を保有するならドルより儲かる日本円にしよう!と考える人たちの売買により、やはり円高ドル安になります。

つまり日本とアメリカ、両方からの金融政策発表により、急に円高ドル安に傾きました。

本来なら、利下げすると利上げとは逆のメカニズムで株価は上がる風潮なのですが、今回はそれ以上に雇用統計が悪かったようです。

円高になると、円安で儲かる企業たち(外需株)の業績悪化が懸念されます。
東京証券取引所の2000社超のうち7割はそのような企業であるため、単純にTOPIXの7割が下落するという事態になります。

東京エレクトロン(8035)も代表的な外需株ですが、8月5日だけで5000円も下がり、ストップ安となりました。
これ、ひと単元である100株を保有していたら、一日で50万円の含み損を抱えることになります…。
(→ 低位株×テーマ株ちゃんねる)

原因4:アルゴリズム取引が拍車をかけた

多くの個人投資家はパソコンやスマホで売買注文を出していると思います。
しかし機関投資家(会社としての投資家)などの一部は、予め設定した通りの条件で自動的に発注するプログラムを用いています。
この条件をアルゴリズムといい、本来は「計算方法」などと訳されます。
要はコンピューター任せで発注しているんですね。

今回、利上げや雇用統計によって急激に株価が下がり、多くのアルゴリズムが損切りを発動した可能性があります。
その結果、人間ならためらってしまうような大胆な損切り注文を次々と実行し、取引時間中の株価をどんどん押し下げたとみられています。
(→ IG証券 フラッシュクラッシュとは?)

私たちはどんどん落ちていく株価を見て、慌てて手動で売り注文を出します。
それによりさらに株価が下がり、新たな損切りアルゴリズムに触れてしまう、という悪循環になります。

原因5:信用取引の余力不足で強制決済

信用取引のルールが発動してしまった可能性があります。
(→ ブルームバーグ)

信用取引とは、手元のお金の3倍の購買力で売買できる取引です。
買い建てで例えると、手元に100万円しかなくても300万円の株を買うことができます。
しかし300万円が200万円に値下がりすると含み損が100万円となり、手元の資金がゼロ円だとみなされてしまいます。
ゼロ円を何倍してもゼロ円なので、300万円の株は保有できなくなり、証券会社によって強制的に決済(この場合は売り)されます。

強制決済されたくなければ、数日以内に追加で100万円を入金して生き延びる追証に対応するか、トータル300万円入金して信用ではなく現物として買ってしまう現引きをするしかありません。

しかし信用取引をする場合、手元の資金は少ないことがほとんどでしょう。
数日以内に大金を用意できなければ、強制決済か自分で損切り注文するしかありません。
いずれにしても売り注文なので、株価を下げる一因となります。

今回は下落幅が大きすぎて数日以内の入金が間に合わず、強制決済されたケースが少なくないと思われます。

原因6:メディア報道が狼狽売りを煽った

メディアが暴落をセンセーショナルに報道しているせいで、投資家心理を焦らせていることも充分考えられます。

株価はちょっとした噂で簡単に上下します。
ひどい例だと、野球の大谷翔平選手の活躍が報道されたとき、日本の大谷工業という会社の株価が上がりました。
大谷工業は配電・通信金物の中堅企業で、野球とは全く関係ないビジネスをしています。

このようにメディアの影響力は大きいので、テレビなどで暴落を大々的に報道すると、大衆の投資家心理は大きく揺さぶられます。
特に新NISAから投資を始めた方は、初めての暴落にどう対応していいかわからず、積み立てていた保有資産を慌てて売ってしまうかもしれません。

このような焦りからくる衝動的な売りを、狼狽売りといいます。
ベテラン投資家でも暴落耐性、つまり覚悟が充分でなければ陥ってしまう心理です。

投資戦略はどうすればいい?

毎月数万円をNISAで積み立てている場合は、売らずにそのままの設定で今まで通り積み立て続けるのがセオリーです。
少額の積立投資のメリットを最大化できるのが暴落局面だからです。

あなたはNISAをたった1年で辞めるつもりで始めましたか?違いますよね。
10年以上先を見据えて慎重に投資信託を選び、毎月の投資額も練ったはずです。

損失が出ている投信を売らずに保有するだけでも不安でしょうし、さらに積み立て続けるというのはメンタルが削れるかもしれません。
しかしここは絶好の買いタイミング・安売りセールだと考えて、淡々と投資を続けたいところです。

ちなみに私サクリは積み立て続けますし、むしろ個別株を10株単位で買い増ししました。

まとめ:色々と重なりすぎた

今回は、2024年8月の日本株の暴落について紐解いてみました。

ふたたび結論
  • 日銀の利上げは株価にマイナスのインパクトだった
  • アメリカの雇用統計内容もマイナスのインパクトだった
  • それらの発表がほぼダブり、マイナスの相乗効果として暴落した

10年単位の長期投資をしていれば、必ず暴落を経験します。

特に2024年の新NISAから投資を始めた方は、初めての試練に困惑しているのではないでしょうか。

実は、積立資産がまだ少ないうちの開始直後に暴落を経験できることは、キズが浅いうちにに最悪局面を痛感できるので、良いことなのです。

今回の暴落をしっかり観察しておけば、次の暴落時には驚くほど冷静でいられるはずです。

※文中に出てくる具体的な投資商品などは、内容をわかりやすく解説するためだけに用いており、これらの商品への投資を勧めるものではありません。実際に投資するかの判断は自己責任にてお願いします。